AfterTouch: 日常的な動作とID システムの相補的拡張
最終更新日: 2006/5/22



◆概要

AfterTouchは,ID認識装置とさまざまなセンサを組み合わせて,IDを認識した後にユーザの日常的な動作(押す,まわす…etc)を続けて行うことで,単機能のIDシステムから複雑な操作へと,情報の粒度をなめらかに切り替えられる入力インタフェース群です.MouseFieldと共通のコンセプトを持ちますが,日常生活の場面に応じた適切な追加操作に着目する点が特徴です.ここでは,Touch&DownとTouch&Turnという二つのシステムを紹介します.

図1 AfterTouch のコンセプト
(左:さまざまなIDシステム【RFID/Felica, 生体認証】
右:日常的な動作【印鑑を「押す」,つまみを「回す」】)




◆Touch&Down

Touch&Down は,RFID リーダーと圧力センサを組み合わせることで,RFIDタグ(カード)を置いて,それを強く押し込むことで,ID システムを拡張するアプローチです.図2 にTouch&Down のプロトタイプを示します.

Touch&Down の有効な活用例としては,電子決済や電子投票システムの拡張が考えられます.たとえば,現在のSuica やEdyなどを利用した電子マネーシステムにおいては,カードを「置いた」時点で即座に課金が行われることが一般的です.こうした1bit の入力システムでは,カードを置くまでは何が起こるかわからず,気づけば課金されていた,という状況が起こりえます.そこで,Touch&Downを利用すれば,Suica を置くことにより,課金金額のプレビューを行い,そのまま押し込むことで課金を完了するシステムを構築できます(図3).

こうした操作は,印鑑を紙に当てて押し込むという日常的な操作を用いて,ユーザの意思確認のプロセスを追加できるため,直感的で使いやすい認証機構として機能すると考えられます.

図2 Touch&Downのプロトタイプ
図3 Touch&Downの利用例



◆Touch&Turn

Touch&Turn は,日常生活空間に散見される「まわす」インタフェース(つまみ,ノブ,蛇口...etc)に,ID認識装置(指紋センサ)を付加するアプローチです.図4 に,Touch&Turn のプロトタイプを示します.


本システムでは,ユーザがつまみを握る際に認証を行い,その後につまみをまわすことで,ユーザに応じて異なる操作を行うことが可能です.たとえば,リビングのオーディオシステムにTouch&Turn を利用すれば,つまみに触れた家族を認識し,それぞれの好みに応じたプレイリストを呼び出すとともに,連続的に選曲を行うことが可能でしょう(図5).また,水道の蛇口に本システムを付加することで,ユーザに適した温度の水を出したり,子供が触ったときには熱湯が出ないような制約を加えることも可能です.

図4 Touch&Turnのプロトタイプ 図5 Touch&Turnの利用例




◆関連発表など
  • 塚田浩二,増井俊之: AfterTouch: 日常的な動作とIDシステムの相補的拡張,インタラクション2006論文集,pp.53-54 (Mar, 2006). [PDF]
  • 特許出願中