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PhantomParasol: なめらかな粒度の情報を伝える傘型情報提示機構
最終更新日: 2006/5/22 作成日: 2005/12/22



◆概要

モバイル環境における情報提示技法では,日常生活を阻害しない程度のアンビエントな情報と,より詳細な情報の使い分けが重要となります.本研究では,モバイル環境においてなめらかに情報の「粒度」をコントロールできる傘型情報提示機構「PhantomParasol」を提案します.PhantomParasolは,傘の内側に組み込まれた複数列のLEDアレイとジャイロセンサーを中心に構成されます(図1).ユーザが傘をさした状態ではアンビエントな情報提示を行い,くるりとまわすことで,LEDの残像効果を用いて空間上に像を描き,段階的に詳細な情報を提示することができます(図2).今後,GPSや無線通信機構と組み合わせたアプリケーションや,エンターティメント(舞台利用)への応用を検討しています.

図1 PhantomParasolの概念図 図2 PhantomParasolの利用イメージ



◆プロトタイプ

PhantomParasolのプロトタイプは,市販の和洋傘の中心軸(柄)にジャイロセンサを,内側にLEDモジュールとマイコンを取り付ける形で実装しています(図3).ジャイロセンサは傘の回転速度をリアルタイムに取得し,LED の点滅周期や表示するコンテンツを切り替えるトリガーとして利用します.LED モジュールは,計8列,各52個の高輝度LEDから構成されます.傘の静止時には52段階のレベルメーターとして動作し,回転時には残像効果により仮想的に52 x 52ピクセルの解像度を持つビットマップディスプレイのように利用できます.マイコンは,これらのデバイスの制御や,ホストPC との通信(コンテンツの変更/保存など)に利用します.

プロトタイプの動作例を図4,5に示します.ここでは,静止時は二つのLEDモジュールを用いてレベルメーター的な表現を行い,回転時には全てのLEDモジュールを利用して天気情報(晴マーク)を表現しています.

図3 プロトタイプの外観
 
図4 プロトタイプの動作例(アンビエント表示) 図5 プロトタイプの動作例(詳細表示)

 

図6. 回転速度に応じたテキストの変化例
(左: "Ireland"(低速時) ,中央: "Dublin"(中速時),右: "Pervasive 2006"(高速時))
 



◆応用

PhantomParasol の応用として,(1)モバイル環境の情報提示(e.g. ナビゲーション,環境情報の提示),(2)エンターティメントへの活用,などを考えています.ここでは,ナビゲーションの応用例について紹介します.

たとえば,PhantomParasol とGPS や方位センサーを連携させたナビゲーションへの応用例を図7に示します.ユーザは傘をさした状態では目的地の方位(LED の点灯方向)や距離(LED の点灯数)をぼんやりと「感じながら」歩くことができます.次に,交差点にさしかかった場合などに傘を回転させることで,残像ディスプレイ上に大まかな地図を表示して目的地を確認できます.さらに,傘をすばやく回転させることで,より詳細な地図を表示することもできるでしょう.

このように,ユーザは,PhantomParasol を用いることで,最小限のアンビエント情報を常時感じつつ,必要に応じてなめらかに詳細情報を確認することが可能です.

 
図7 ナビゲーションへの応用イメージ



◆関連発表など
  • 塚田浩二,増井俊之: PhantomParasol: なめらかな粒度の情報を伝える傘型情報提示機構,WISS2005論文集,pp.57-62 (Dec, 2005). [PDF]
  • 特許出願中.