RFIDを使ってみよう(13.56MHz アンテナ編)
作成日: 2005/1/18  最終更新日: 2005/1/18



◆はじめに

ここでは,Software Design 2005年2月号記事で紹介したプログラムなどについてまとめています.複数のRFIDタグを同時に認識できる(アンチ・コリジョン機能搭載)Texas Instruments社製 S6350 Midrange Reader Module を例として,13.56MHz帯用のRFIDアンテナの手軽な作成方法について紹介します.記事とあわせてご覧下さい.

なお,雑誌記事の前半で紹介したプログラムはRFIDを使ってみよう(複数タグ編) からダウンロード可能です.こちらも参考にしてみてください.




◆S6350 Midrange Reader Module

Texas Instruments S6350 Midrange Reader Module は,価格が一個当たり約\16,000と,アンチ・コリジョン機能搭載のRFIDリーダーとしてはかなり安価です(2003年12月現在).その反面,シリアル端子や電源端子などが搭載されていないため,簡単な接続用基盤を自作する必要があります(図1).

ここでは,外付け回路の実装に必要な部品リスト,及び基本的な回路図と基盤配置図について紹介します.非常にシンプルな回路ですので,電子工作に不慣れな人でもそれほど苦労せずに組み立てることができると思います.ここで紹介している部品は一般的なものばかりですので,秋葉原やWebの通信販売(秋月電子通商 など)で用意に揃えることが可能です.

 
 図1 S6350&PC接続用基盤外観
部品リスト
  • 7805 (レギュレータ)
  • セラミックコンデンサ(0.1uF x 2)
  • 2.1型DC端子(基盤接続用)
  • 9ピンシリアルコネクタ(メス,基盤接続用)
  • ピンヘッダ(メス,16ピン)
  • ピンヘッダ(オス,16ピン)
  • ピンヘッダ(2ピン)
  • ユニバーサル基盤
 
回路図データEagle形式) 基盤CADデータEagle形式)
 図2 回路図 図3 基盤配置図



◆RFIDアンテナの手軽な製作

タグの読取範囲を調整するためには,リーダに接続するアンテナの形状を変更する必要があります.アンテナを自作することが出来れば,タグの読み取り範囲を目的にあわせて手軽に調整できるため,RFIDシステムの応用範囲は大きく広がります.

正確にアンテナをチューニングするためにはさまざまな測定器が必要となりますが,記事本体ではこうした計測機器を利用せずに,個人ユーザが手軽にアンテナを製作できる簡易的な方法を説明しています.下図に,製作するアンテナの完成図と等価回路を示します. ここで,インダクタンス(L)はアンテナコイルの線材やサイズ,形状で決まります.抵抗(R)とキャパシタンス(C)は,別途作成する調整用のユニットで設定します.

 
図4 製作するアンテナの外観 図5 アンテナの等価回路 



◆材料と手順
RFIDアンテナの材料と基本的な製作手順は以下のようになります.ここでは,製作時に役立つCGIプログラムを中心に紹介します.詳細については,記事本体を参考にしてください.
材料リスト
  • エナメル線 (太さ0.2 - 1mm程度 * 数m)
  • ユニバーサル基板(少量)
  • 抵抗(1/4W,1k〜20k程度,抵抗値は製作手順にて計算)
  • セラミックコンデンサ(1〜100pF程度,キャパシタンスは製作手順にて計算)
  • トリマーコンデンサ (10〜60pF程度の範囲で可変.調整用に必要)
  • 同軸ケーブル(50Ω)
    • 入手が難しければシールド線でも可.
  • ピンソケット(2ピン*2個))
    • 抵抗・コンデンサを手軽に変更するために利用.あると便利.
  • スチレンボード
    • 位置合わせ用.あると便利.
  • 半田
  • ビニールテープ(セロテープ)
製作手順
  1. まず,アンテナのサイズを決定します.
  2. アンテナコイルのインダクタンスを計算します.インダクタンスと巻き数の計算CGIを利用してください.
  3. 調整用ユニットに必要なキャパシタンスと抵抗値を計算します.抵抗とキャパシタンスの計算CGIを利用してください.
  4. アンテナとリーダー同軸ケーブルで接続します.
  5. 調整ユニットのトリマーコンデンサを用いてアンテナの調整を行います.RFIDを使ってみよう (複数タグ編)で紹介しているサンプルプログラムを利用してください.
 
 図6 アンテナの材料一覧  図7 リーダーとアンテナの外観 (調整の様子)



◆インダクタンスと巻き数の計算

プログラムの簡単な使い方は以下のようになります.

  1. 「線材の太さ」をmm単位で入力します.
  2. 次に,コイルの形状を「円形」か「長方形」から選択し,円形ならコイルの直径を,長方形ならコイルの縦横の長さをmm単位で入力します.
  3. さらに,計測の対象に応じて,「計算モード」を選択し,「インダクタンス」か「巻き数」のどちらかのデータを入力します.
  4. 最後に,「計算」ボタンを押せばこのコイルの「インダクタンス」が表示されます.

※インダクタンスは,約5uH以下におさめないと,必要なキャパシタンスの値が小さくなりすぎて,調整部ユニットの製作が難しくなるようです.

 
※必ず入力
 線材の太さ:   mm    
 
※コイルの形状(どちらか選択&入力)
円形 長方形
 コイルの直径:   mm コイルの幅:   mm
    コイルの高さ:   mm
 
※計算モード(どちらか選択&入力)
インダクタンスから巻き数を計算 巻き数からインダクタンスを計算
 インダクタンス:   uH 巻き数:  
 
※必要時のみ入力
比透磁率:   (空気 = 約1.00)
 
※その他(入力不要)      
コイルの長さ:   mm 長岡係数:  
 

 



◆抵抗とキャパシタンスの計算
このプログラムの使い方はシンプルです.
  1. まず,動作周波数をHz単位で入力します.
  2. 次に,先程計算したインダクタンスをuH単位で入力します.
  3. これらの入力が終わったら,「計算」ボタンを押すと,抵抗値とキャパシタンスが計算されます.

 

 
※必ず入力
 周波数   Hz  インダクタンス:   uH
 
 抵抗:   Ω  キャパシタンス:   pF
 
 



◆おわりに

ここでは,Software Design 2005年2月号で紹介した内容(13.56MHz帯RFIDリーダー用のアンテナ作成)で利用するプログラムなどについて簡単にまとめました. 今回紹介した方法は,高価な計測器などを利用していないため,正確にチューニングされたアンテナを作るのことはできませんが,個人的な試作システムには必要十分な感度のアンテナを製作できると思います.

アンテナデザインのより詳細な情報については,HF Antenna Design Notes などを参考にしてください.

 



◆関連情報


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