RFIDを使ってみよう(準備編)
作成日: 2004/3/26  最終更新日: 2005/1/18



◆概要

最近,SUICAやEdyなどの普及にみられるように,RFIDや非接触ICカードなどを使ったシステムが幅広く実用化されてきています.
こうした流れに伴い,個人レベルでもRFIDを使ったシステムを比較的気軽に構築できるようになって来ました.
RFIDは物流管理や個人認証だけでなく,インタラクティブな実世界システムを作る際にも幅広く利用することができるため,興味を持っている人も多いのではないかと思います.

一方,個人レベルでRFIDを用いたシステムを開発するためのリソースはまだあまり見かけられません.そこで,ここではRFIDを用いた簡単なインタラクティブシステムを作るための実践的な情報をまとめてみます.

まず,RFIDの簡単な特徴や,選択の際の基準,及び使うために必要な準備について紹介します.
実際にRFIDリーダーを制御するソフトウェアは,基本編で紹介しています.また,タグの読み取り範囲を変更するためのアンテナの設計方法について,アンテナ編で紹介しています.




◆RFIDとは?

RFIDとは,Radio Frequency Identification Systemの略で,「媒体に電波・電磁波を用いたIDシステム 」です.
インタラクション技術としての視点から見ると,RFIDを用いることで,実世界のオブジェクトに容易にIDを割り当てることができ,オブジェクトに応じた操作ができることが最大の特徴になります.
RFIDシステムは,リーダー(タグの読み取り機)とタグ(IDを格納する媒体)を中心として構成されます.
RFID自体の特徴,解説については,さまざまな媒体で紹介されていますので,ここでは深くは扱いません.
以下の関連ページなどを参考にしてください.
※GoogleでRFIDで検索するだけでも,いろいろな情報を入手することが可能です.

 



◆RFIDの選択基準

次に,実際にRFIDシステムを購入する際に,考慮すべき選択基準について紹介します.
インタラクティブシステムを作ることを目的とした場合の選択基準は,大きく分けて以下の二点になります.

  1. Passiveタイプか,Activeタイプか.
  2. 複数のタグの同時読み取り(アンチ・コリジョン)ができるか.

ここでは,それぞれの点について詳しく見ていきます.

◆PassiveタイプとActiveタイプ

簡単にそれぞれの特徴を説明すると,以下のようになります.

  • Passiveタイプ
    • タグに電池を内蔵せず,リーダーは電磁誘導などを用いてタグに給電し,IDを読み取る.
    • IDの読み取り可能範囲が狭い.(数cm〜最大1m程度)
    • タグの小型化・薄型化が容易.
  • Activeタイプ
    • タグは電池を内蔵し,微弱無線などで一定時間ごとにIDを発信する.
    • IDの読み取り可能範囲が広い(数m〜最大数十m程度)
    • タグの小型化は限界がある.(電池のため)

このように,PassiveタイプとActiveタイプでは,特にIDの読み取り可能範囲が大きく異なるため,システムの目的(どれくらいの範囲のタグを認識対象とするか)に応じて明確に使い分ける必要があります.
たとえば,何かを「置く」とインタラクションが起こるようなシステムでは,PassiveタイプのRFIDを用いる方が適切な場合が多いですし,ユーザが一定の場所に「いる」ことを認識するシステムでは,ActiveタイプのRFIDを用いる方がよいでしょう.

以下に,Activeタイプ,Passiveタイプのリーダーとタグの例を示します.

図1 RFIDリーダーの例 [Passiveタイプ]
(Texas Instruments S2000 Micro Reader.右はアンテナ.)
図2 RFIDリーダーの例 [Activeタイプ]
(RF Code Spider Reader)
図3 RFIDタグの例
(中央: S2000 MicroReader用タグ[Passiveタイプ]
右: RF Code Spider用タグ[Activeタイプ])
◆複数のタグの同時読み取り(アンチ・コリジョン)

もう一つの重要な点は,複数タグの同時読み取り機能(アンチ・コリジョン機能)が搭載されているか,という点です.
この機能が搭載されていないと,一度に読み取れるIDタグは一つだけになってしまいます.

アンチ・コリジョン機能は,読み取り範囲の広いActiveタイプのRFIDシステムにはほぼ標準でついているようですが,PassiveタイプのRFIDシステムには搭載されていないものもあります.この機能は搭載されている方が望ましいですが,一般にアンチ・コリジョン機能を持つRFIDリーダーは,そうでないRFIDリーダーよりも価格は高くなるようです.そのため,複数のIDを同時に認証する必要がなければ,アンチ・コリジョン機能のないリーダーを選択してもよいかもしれません.

以下に,アンチ・コリジョン機能を搭載したPassiveタイプのRFIDシステムの例を示します.詳細は複数タグ編を参照してください.

図4 アンチ・コリジョン機能付RFIDリーダーの例 [Passiveタイプ]
(Texas Instruments HF-I Midrange Reader)

図5 アンチ・コリジョン機能付 RFIDタグの例 [Passiveタイプ]
(Texas Instruments HF-I Tags)

◆その他のポイント

上述した二つの点以外の選択基準としては以下のようなものも考えられます.

  1. タグのIDが読み取り専用か,書き換え可能か
  2. ユーザデータ(ID以外の任意のデータをタグに保存できるか
  3. 暗号化機能があるか

これらは,IDを流通システムや電子マネー用途(Suica,Edyなど)に利用する際には重要ですが,インタラクティブシステムの試作を目的とする場合はそれほど重要な点ではないと考えられますので,ここでは扱いません.





◆RFIDを使う準備

それでは,RFIDシステムの簡単な使い方を紹介します.今回利用するRFIDリーダーは,上述したTexas Instruments S2000 Micro Readerです.これはPassiveタイプのリーダーで,アンチコリジョン機能はありませんが,比較的安価に入手できる特徴があります.
私は,Texas Instrumentsの代理店 の一つ,マイクロ・トーク・システムズから購入しました.
価格は評価キットが\33,000, 組み込み型RFIDリーダーが \10000/個,RFIDタグが\1000以下/個(個数により大きく変動)と,比較的入手しやすいものです(2003年12月時点).
評価キットには,シリアル接続のRFIDリーダー,アンテナ,ACアダプタ,各種RFIDタグ(図6参照)などが含まれます.
とりあえずは評価キットを購入し,必要に応じてRFIDタグを10〜100個程度購入するのがよいかと思います.(評価キットだけでは使いやすいサイズのタグが少ないため. )

また,基本的なことですが,このRFIDリーダーはRS232(シリアル)を用いてPCと通信を行うため,シリアルポートのないノートパソコンなどで利用するためには,図7のようなUSB⇔シリアル変換ケーブルを別途購入する必要があります.
カメラ量販店などでは大抵取り扱っていると思います.

評価キット中のリーダーとPCをシリアルケーブルで接続し,ACアダプタとアンテナを接続すれば,RFIDリーダーの準備は完了です(図8).

次のステップとして,基本編にてRFIDリーダーを制御するための基本的なソフトウェアについて紹介します.

図6 TIのRFID評価キットに同梱されるRFIDタグ
(サイズによって通信距離などが異なる)

図7 USB⇔シリアル変換ケーブルの例
IOData USB-RSAQ2
図8 ノートPCとRFIDリーダーの接続例


 

◆関連URL
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 -その他の関連情報


[RFIDぶらり旅]

[デバイスふらり旅]